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知財の窓

海外

特許の場合

海外で特許権を主張するための方法

◆日本で取得した特許権が海外でそのまま通用することにはなりません。各国での特許は互いに独立しており、外国での保護を求める場合には、原則として、その外国の特許庁に特許出願して特許を取得しなければなりません。

◆海外での権利化においては、基本条約(パリ条約)で登録の可否判断と権利内容は各国の判断に委ねられており、基本は各国ごとに出願書類を提出し、審査を受けることになっていましたが、昭和53年以降新たな手続ルートを認める特許協力条約(PCT)が施行されたことに伴い、2つのルートによる手続が可能になって利用されています。

◆2つのルート

2つのルート

パリルート出願の手続はどのようなものか

◆日本国出願から12ヶ月以内に優先権主張してパリ条約同盟国に出願を行ないます。

その際、外国にも代理人を立てる場合が通常です。パリルート出願では外国現地の母国語での翻訳文での出願を必須としている場合が多く、優先権主張して外国特許出願を行なう場合は、日本側で日本出願から12ヶ月以内に翻訳を準備して母国語あるいは英語等での明細書、クレイムその他の出願書類を用意した上で出願を行なうことになります。

PCTルート出願の手続はどのようなものか

◆PCTルート出願では、日本出願を基礎に優先権主張してPCT国際特許出願を行い、さらに、日本出願から30ヶ月以内の国内移行手続時に明細書翻訳を各移行国に対して提出することになります。したがって、手続き的には翻訳作業、外国代理人確定、委任状、宣誓書等手続フォームの準備等について時間的余裕があり、また、国内移行すべき指定国の選定も検討に充分な時間を費やすことが可能です。

◆PCTルートでは出願後4~5ヶ月程度で国際調査報告が行われ、国際段階で相当程度の登録の可能性を知ることができ、また請求範囲の補正も認められています。また、より進んだ国際予備審査も利用できる点もあり、PCT国際出願が多く利用されています。日本での権利化自体をPCTルートで行う場合には日本国内に国内移行手続を行えばよいので、日本での出願を行なう必要がない場合には、最初からPCT出願を利用して出願することも可能です。

商標の場合

海外での権利化の手続はどのようなものか

◆商標権についても海外での権利化のためには基本的には各国ごとの手続に即して権利付与される経過を通る必要があります。商標の場合、優先期間は第1国出願日から6ヶ月なのでパリルートで優先権主張を伴う出願を行なう場合には第1国出願日から6ヶ月以内に外国特許庁に対して出願を行なう必要があります。

ただし商標は新規性、進歩性要件はないので、優先期間経過後でも先登録商標等がなければ海外で権利化することは可能な場合があります。

マドプロ商標登録出願による権利化の手続はどのようなものか

◆マドリッド協定議定書(※)加盟国で統一的に行われる手続方法で、2011年5月現在で加盟した84カ国について、1つの手続で出願できるようになっています。(※正式には、「標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書」;PROTOCOL RELATING TO THE MADRID AGREEMENT CONCERNING THE INTERNATIONAL REGISTRATION OF MARKS)

◆日本特許庁に対する英語による1つの手続で、出願人が指定した指定国に出願したのと同様に扱われる。また、条件を充たせば国際登録日から指定官庁での登録に対すると同様の保護が与えられることになります。また、更新登録についても日本特許庁に対する英語による1つの手続で、行なうことが可能です。したがって、各国ごとに翻訳を行う必要がなく、手続も早く行うことができます。

マドプロ商標登録出願の手続ルート

マドプロ商標登録出願の手続ルート

意匠の場合

海外での権利化のための手続

◆意匠権についても優先期間は第1国出願日から6ヶ月なのでパリルートで優先権主張を伴う出願を行なう場合には第1国出願日から6ヶ月以内に外国特許庁に対して出願を行なう必要があります。

意匠についての世界的な出願統一条約はありませんが、EU域内では共同体意匠制度を利用することができます。