婚姻届の証人欄を代筆すると、有印私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪に当たり得ます。名前を使われた人に知られる、後日のトラブルで届書の記載が確認されるといった経路で発覚することもあります。一方で、婚姻そのものは、証人欄の不備だけでは無効になりません。

証人を頼める人がいない場合は、友人・親族に頼むか、第三者の証人代行を使えば、代筆をせずに婚姻届を出せます。

婚姻届の証人欄の代筆は違法になり得る

婚姻届には、成年の証人2人以上の署名が必要です(民法第739条第2項)。証人欄は、証人になる人が自分で署名する欄です。

この欄に、夫婦や第三者が他人の名前を書き込むと、「他人の署名を使って事実を証明する文書を作った」ことになり、刑法の私文書偽造の罪に当たり得ます。実在する親や友人の名前を使った場合でも、架空の名前を使った場合でも、問題になる点は変わりません。

名前を使われた人が了承していた場合でも、本人が自分で書いていなければ、偽造と判断される可能性があります。証人欄は本人が自分で署名することを前提とした欄で、本人の了承があっても自署が前提の文書では偽造が成立するとした判例の考え方が及び得るためです。

なお、証人本人が病気や障害などで署名できないと市町村長が認める場合は、代わりの人が氏名を書き、その事由を届書に記載する制度があります(戸籍法施行規則第62条)。本人が自分で書けるのに代わりに書く行為は、この制度の外です。

なお、2021年9月から婚姻届の押印は任意になりました。押印が要らなくなっただけで、証人本人の署名が必要なことは変わっていません。

代筆がバレる主な経路

代筆は、名前を使われた本人、後日の届書の確認、窓口での筆跡や記載の確認という3つの経路で発覚し得ます。窓口では通常、証人本人の身分証は求められないため、受理の時点で分からなくても、後から明らかになることがあります。

名前を使われた人に知られる

親や友人の名前を無断で使った場合、本人が後日、婚姻の話題や書類から気づくことがあります。名前を使われた人は、刑事告訴や被害の申告をすることができます。私文書偽造の罪は、告訴がなくても捜査の対象になり得る罪です。

届書の記載を後日確認される

役所に提出された婚姻届は保管されており、利害関係人は、特別の事由がある場合に限り、届書の閲覧や記載事項証明書を請求できます(戸籍法第48条第2項)。夫婦間や親族間のトラブル、相続の手続きなどでこの請求がされると、証人欄の記載が確認され、代筆が問題になることがあります。

筆跡や記載内容から疑われる

証人欄の2人分の筆跡が届出人の筆跡とよく似ている、証人の住所・本籍の記載が不自然といった場合、窓口で確認を求められることがあります。記載に不備があれば、受理の前に確認や訂正を求められます。

当たり得る罪

証人欄の代筆で問題になるのは、主に次の2つの罪です。

罪名条文法定刑どんな行為か
有印私文書偽造罪刑法第159条第1項3か月以上5年以下の拘禁刑他人の署名を使って、事実を証明する文書を作る
偽造私文書等行使罪刑法第161条第1項同上偽造した文書を役所に提出する

拘禁刑は、2025年6月1日に施行された改正刑法で、懲役と禁錮が一本化されたものです。

このほか、夫婦の間に婚姻の意思がないのに婚姻届を出す、いわゆる偽装結婚の場合は、戸籍に事実と違う記載をさせたとして、公正証書原本不実記載等罪(刑法第157条第1項)の対象にもなります。お互いに結婚する意思がある通常の婚姻であれば、この罪は問題になりません。

婚姻そのものは無効にならない

「婚姻が無効になるのでは」と心配される方が多いのですが、証人欄の不備だけで婚姻が無効になることはありません。

民法第742条は、婚姻が無効になる場合を「当事者間に婚姻をする意思がないとき」「婚姻の届出をしないとき」に限っています。そのうえで、届出が証人に関する方式を欠くだけであれば、婚姻はそのためにその効力を妨げられない、と定めています(同条第2号ただし書)。

つまり、二人に結婚する意思があり、婚姻届が受理されていれば、証人欄が代筆だったとしても婚姻は有効に成立しています。ただし、婚姻が有効であることと、代筆した行為が罪に当たり得ることは別の問題です。

すでに代筆してしまった場合

提出前に気づいた場合

提出前であれば、その婚姻届は使わず、新しい用紙で書き直してください。提出前でも、使う目的で他人の署名を書いた時点で偽造の罪は成立し得ます。提出しなければ、行使の罪には当たりません。証人は、友人・親族に改めて頼むか、第三者の証人代行を使えます。

すでに提出・受理された場合

婚姻は有効に成立しているため、婚姻届を出し直す必要はありません。受理された届書を自分で訂正することはできないので、追記や差し替えを役所に求める前に、弁護士に相談して対応を決めてください。名前を使ってしまった人がいる場合も同じです。

代筆の代わりに使える方法

友人・親族に頼む

証人は成年であれば誰でもなれます。親、きょうだい、友人、職場の同僚など、関係性に制限はありません。友人に頼むのは非常識ではなく、お礼の目安や頼み方は婚姻届の証人を友人に頼むときのマナーで整理しています。

第三者の証人代行を使う

頼める人がいない、身近な人に知られたくないといった場合は、証人代行サービスを使えます。民法第739条第2項は証人を「成年の証人二人以上」と定めるだけで、当事者との関係を問わないため、第三者が証人になることは合法です。

きずな証人代行事務所では、婚姻届の証人2名分の署名を、1通3,900円(税込)から全国郵送で承っています。届出書の本体はご本人が記入し、当事務所は証人欄の署名だけを行います。申し込みは申込フォームから行えます。

よくある質問

Q. 婚姻届の証人欄を自分で書いたらバレますか。

名前を使われた人が気づく、後日のトラブルで届書の記載が確認される、窓口で筆跡や記載の不自然さを確認されるといった経路で発覚することがあります。発覚しなくても、代筆そのものが罪に当たり得ます。

Q. 婚姻届の証人欄の代筆は何の罪になりますか。

他人の署名を使って文書を作るため、有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)と、その文書を提出した偽造私文書等行使罪(同第161条第1項)に当たり得ます。法定刑はいずれも3か月以上5年以下の拘禁刑です。

Q. 証人欄が代筆だと婚姻は無効になりますか。

なりません。民法第742条第2号ただし書により、証人に関する方式を欠くだけであれば、婚姻の効力は妨げられません。二人に婚姻の意思があり、届出が受理されていれば婚姻は有効です。

Q. 親の了承をもらって、親の名前を代わりに書いてもいいですか。

了承があっても、本人が自分で署名していなければ偽造と判断される可能性があります。証人欄は、証人になる人に自分で署名してもらってください。病気や障害などで本人が署名できない場合は、市町村長が認めれば、代わりの人が氏名を書いて事由を記載する制度があります(戸籍法施行規則第62条)。

Q. 証人がどうしても見つからないときはどうすればいいですか。

第三者の証人代行サービスを使えます。証人になれるのは成年であれば誰でもよく、当事者との関係は問われません。

まとめ

  • 婚姻届の証人欄は証人本人が署名する欄で、代筆は有印私文書偽造罪・同行使罪に当たり得る
  • 窓口では発覚しなくても、名前を使われた人に知られる、後日届書の記載が確認されるといった経路でバレることがある
  • 証人欄の方式を欠くだけなら、婚姻そのものは無効にならない(民法第742条第2号ただし書)
  • 提出前なら書き直し、受理後は書き換えずに弁護士へ相談する
  • 証人がいなければ、友人・親族に頼むか、第三者の証人代行を使う

出典:民法(e-Gov法令検索)(第739条=婚姻の届出、第742条=婚姻の無効)/刑法(e-Gov法令検索)(第157条、第159条、第161条)/戸籍法(e-Gov法令検索)(第48条=届書の記載事項証明)/戸籍法施行規則(e-Gov法令検索)(第62条=署名できない場合の代書)。本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案については弁護士にご相談ください。